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朝鮮紀行 英国婦人の見た李朝末期 講談社学術文庫 / イザベラ・L・バード 【文庫】のレビューは!?
40代 男性さん
本書は李氏朝鮮末期1894年(明治27年)〜1897年(明治30年)の様子を一英国人女性旅行家が記した紀行文ですが,単に旅行を通して日常の朝鮮人を記しただけでなく,彼女が訪れた計4回の旅行時期は,日清戦争,東学党の乱,閔妃暗殺等の歴史的事件と重なっていたこともあり,歴史に翻弄される当時の朝鮮王朝の様子にも触れられた貴重な一級資料でもあります(編集方針から一部不適切な表現や定説からはずれた歴史記述は残されています)。572頁にわたるこの大作を読了するのは大変でしたが,読後の印象を思いつくまま挙げてみます。1.62歳で尋常でない旅を敢行した女史の好奇心とバイタリティーに驚いた。2.一外国人旅行者として国王夫妻との謁見が許される程の信頼を得た女史の人柄がしのばれる。3.半島の自然の豊かさが良く観察されている。4.東洋の悪癖である猜疑心,狡猾さ,不誠実さがあり,男同士の信頼はない。また女は蟄居しており極めて劣った地位にあると断言する。5.両班階層が官僚職を独占し,堕落しきった官僚制の改革に日本が着手した時,私利私欲から悉く反対された。当時朝鮮には階層が2つしかなく「盗む側」と「盗まれる側」で,「搾取」と着服は上層から下層まで官吏全体の習わしであった。6.朝鮮の領域を東経130度33分迄としている。(竹島は東経131度52分)7.諸外国の干渉を強く受けるまで(1876年前後)おおよそ街・村には道という道はなく,人畜の汚物だらけで悪臭がひどく,家とは呼べないあばら屋住まいの常民が殆どであった。8.儒教の影響から知識階層は会話に漢語を交えるが,当時の清国すら使わない1000年前の漢語を使う。ハングルは女性,子供,無学者らが専ら使い,その言語は漢語絶対主義の知識階層から無視されていた。9.300年前(19世紀後半から見て)の秀吉による朝鮮出兵は遠い過去ではなく,日本による開国以前から反日感情は強かった。10.1894年当時,袁世凱の影響もあり,総じて朝鮮人に対する清国人の態度はまずまずであったのに対し,日本人の朝鮮人に対する態度は「話にならない」ほどひどかった。11.在朝英国総領事ヒリアー卿より,朝鮮が国として存続するするには大なり小なり保護状態に置かれる事は絶対必要であり,日本の武力によってもたらされた名目上の独立も朝鮮は使いこなせぬ特典で絶望的に腐敗しきった行政という重荷にあえぎ続けていると指摘されている。12.清国は朝鮮を属国と表現していた。
60代 男性さん
李氏が統治していた頃の朝鮮半島が描写されています。